みなさんこんにちは、ヤゴー編集部です。今回はなんと、大阪にお邪魔しての【取材記事】です!
目的地は、大阪市北区にある『うつわcafeと手作り雑貨の店 ゆう 大阪梅田店(以下:cafeゆう 大阪梅田店)』(https://yukobo.co.jp/cafeyu/)
こちらのカフェでは、白川町立白川中学校3年生が修学旅行時に訪れ取材・交渉したことで、店頭で白川茶を取り扱っていただくことになりました!
「大阪のカフェに営業をして白川茶を取り扱ってもらう」という中学生の活躍は新聞でも取り上げられ(https://www.asahi.com/articles/ASSD203T1SD2OHGB007M.html)、
地域住民や町の議員の方々に「持続可能な白川」をテーマに提案も行いました。
ということで、実際に『cafeゆう 大阪梅田店』にお邪魔してきました!
阪急梅田駅から徒歩すぐの立地という人通りと交通量が多い場所にあって、緑に囲まれた佇まいや雰囲気はなんだか秘密基地への入り口のよう。
広々とした店内には販売や展示の手づくりの陶器が飾られており、落ち着いた照明や音楽に気持ちをリラックスさせることができます。
隣の席の人の声は、聞こえてくるけど内容までは分からず気にならない。ひとりでも、大事な人と複数人でも、ゆっくりと時間を過ごすことができる空間です。
『cafeゆう』は、全国で陶芸教室を展開している株式会社ゆう工房(以下:『ゆう工房』)がプロデュースしているカフェで、ドリンク注文時には好きなうつわを選んで淹れてもらえるなど、カフェでの”時間そのもの”をサービスとして提供しています。
中学生が運んでくれた白川茶は、どんな場所で、どんな想いで販売されているのか。「地元の想いが、かたらうところ」である地域メディア『ヤゴーシラカワ』だからこそ、聞きたいことを『ゆう工房』の代表取締役である木下優(きのしたゆう)さんにお伺いしてきました。
お話を聞いた人:木下優
臨床検査技師を経て作陶活動。薪窯での創作活動に没頭。
現在は全国6教室の陶芸教室とカフェ2店舗を運営、陶芸講師の指導や様々な手作り商品の企画開発、cafeゆうの器の制作を行う
白川町での「ロマンスの日々」
——木下さん、今日はよろしくお願いします。『cafeゆう 大阪梅田店』では白川中学校3年生からの提案で、2024年11月から白川茶の販売をされているんですよね?
そうですね。新聞に載ったこともあって、岐阜のほうから来てくれたり、白川出身で大阪に住んでる方が来てくれたこともありました。みなさん満足してくれてますね。
——岐阜からはすごいですね…!中学生からの提案を受けられた経緯をお聞きしたいです。
お話を聞いたときに「やってみたいな」とすんなり思えました。地域活性化のためにお茶を売るっていう発想がすごく良いし面白い。
それに抹茶や和スイーツを提供するところはあるけど、緑茶を売りにしているカフェって関西ではなかなかないんですよ。それもあってちょうど「緑茶とスイーツのセットでなにか提供したいな」と思っていたんです。
——なるほど…都市部でそうやって取り扱ってもらえるとすごく緑茶の可能性を感じます。
それに、白川に対する愛着っていうのもありますね(笑)
——愛着ですか?
僕の母親は白川町の黒川地区出身なんです。小さい頃はほんまによく川で泳いだり、父親と鮎の友釣りをしたり、しょっちゅう行ってましたね。
母親も収穫時期にはよく地域の茶摘みに駆り出されて行ってました。
——そんなご縁があったんですか!
この前、当時通ってた”万事屋”みたいなお店が今もやってるって聞いて…
——黒川地区だと、エイトクヤさんですかね?
あ、エイトクヤさん!当時チキンラーメンが出たばっかりで「こんな美味しいものが世の中にあるのか!」って思って、よう行きました。数十年前から今もやってはるってすごいですよね。
——こんな大阪の真ん中で白川のローカルトークができるなんて思いませんでした(笑)
おじいちゃんが何十個と川に仕掛けをして、次の日見に行くとうなぎがめっちゃ獲れてたこともありました。それを朝バーンと捌いて、かば焼きにして!こんなん今思ったらどんだけ裕福なことしてるんやろうって(笑)もうロマンスですよねほんとに。
自分で工夫して遊ぶ、そういうことはぜんぶ文化やと思います。
——工夫して遊ぶことが、文化…
この場所(cafeゆう 大阪梅田店)は開業時から20年近く内装もほとんど変わってないんです。周りはどんどんお店も変わっていくけど、ここはずっとこのまま(笑)
外の様子を植木越しに見てるのが、なんか楽しいんですよね(笑)それにラテアートみたいにカフェタイムを楽しめたりとか、うつわのギャラリーや照明なんかの”ここだけの空間”があるんです。
そういう落ち着く空間をつくって文化提案をする。チェーン店のカフェもたくさんありますけど、僕らのスタイルを貫くことで差別化したいなと思っています。
ものづくりと”おもてなし”から始まるカフェ
——白川町での体験もすべてこの場所に反映されていると思うと、なんだか不思議な感覚になります…!木下さん自身のことをお伺いしてもいいですか?
元々大学を出て他の仕事をしてたんですけど「自分のやりたいことはこの仕事じゃないなぁ」と思いつつ、20代後半になってけっこう模索してましたね。
その時に美術系が好きだったこともあって、知り合いからの紹介で陶芸をちょっとやったんですよ。それがすごく自分に合ってて。
陶芸ってひとりでもできますし、みんなで一緒に窯を焚いたりもできて、自他共に楽しめるんです。個人でも、みんなと一緒でもできる。こういう複合的な趣味ってなかなかないなって思ったんです。
やってるうちにどんどん楽しくなって、自分の仕事も欲しいと工房をつくりました。
——工房をつくるってすごい大がかりですよね…!
会社の同僚が「陶芸してみたいから遊ばせてよ」って来てくれて、そこから陶芸教室を始めて元の仕事を辞めたんですけどね。
けっこう計画性はないんですけど、自分のやりたいことが見つかって良かったなと思います。
——仕事として始めたというわけではなく、趣味の延長に今のお仕事があるんですね。
そうですね。陶芸のうつわって言ったら”おもてなし”の部分があるじゃないですか。
当初はこのビルの上階だけで陶芸教室をやってたんですけど、1階が空いたので「つくったうつわを使ってカフェをやってみよう」って始めたんです。
ものづくりが好きなのと、カフェを始めて近所の人に楽しんでもらえたらいいなぁっていうのがちょうど合体できたというか。
——なんだかこのお店が落ち着く理由が分かったような気がします…売上などではなく、ものづくりとそれが土台にある”おもてなし”が始まりにあるからなのかな、と。
経営ではなく「どうやったらお客さんが喜ぶか」っていうものをもっと追求して、そこから生まれてくる利益がいちばん美しいと思います。
社員が20名以上おられるので、趣味だけで食べてはいけないっていう部分もありますけどね(笑)
結果ではなく「今が良いかどうか」だけを見る
——きっとそこはバランスが難しい部分ですよね。
でも僕はあんまり計画性がないんですよ。
それって陶芸も同じで、今美しいか美しくないかをすぐ判断していく。それがアートで、アートに繋がっていくというか。
陶芸をやる時も、でき上がりを想像してないんですよ。
——え、そうなんですか!?
でき上がりを想像すると、大きさを測ったり高さを合わせたりして、すごく理性的な自分になって規制がかかってくる。それを取っ払って「今が良いかどうか」だけを見ると、違うものが生まれてくるっていうんですかね。
今多くの人が「これだけ売上がないといけない」とか「そのためには何をしないといけないか」とかって計画組むでしょ?これいらなくって(笑)
僕としては何をするにしてもまず結果を求めずに、今良い事ができてるかどうか判断してます。
——それは、会社経営も同じですか?
会社経営は「社員が面白いと思ったことをやったらいいんじゃない?」っていうタイプです(笑)
——会社も、木下さん含めた社員のみなさんのアート、文化の積み重なりというか。
会社も30年以上続いてますけど、もっと熟成するには100年以上かかるんやろうなぁと思ってるんですよ。僕も年齢的に次の世代にバトンタッチしていく時になるので、その土台をつくっておきたいですね。
——お話を聞いているとよりいっそう、今後も楽しみだしまた来たくなります。最後に、白川町の中学生に一言いただけたらなと思うのですが。
これだけカフェがあるなかから、よくうちに来てくれはったなと思いますね(笑)
僕も最初陶芸を始めたころ、陶器を取り扱ってもらうために営業に行ったりいろんなことをやりましたけど、門前払いとか「なに言ってんや!こんなものどうすんねん」みたいな冷たい対応がけっこうあったんですよ。
でも受け入れてくれるところはあるし、そういう受け入れてくれそうなところに中学生の子たちは今後も進んで欲しいですね。そういうところがどこにあるのかを読む力も大事だと思います。
——白川町で繋がるカフェを選ぶって、すごい縁ですよね。中学生たちも『cafeゆう』での体験を経て「地域活性化のために白川町で特産品を使ったカフェをつくりたい」と提案していました。
そういうのをね、役場の人たちが「面白いね、やってみよう!」ってなったらいいのにね。
なんとなく始めてもダメだけど、国道沿いとかでいろいろ組み合わせて企画を立ててやればうまくいくと思います。
で不思議なんですけど、不可能ってないんですよやっぱり。やったらたぶんうまくいくと思う。僕はどっちかっていうとそういうのに対してすぐワクワクしてしまって「なにをしたらうまくいくんやろう?」って考えてしまうんです。
そうやってできたカフェに中学生の子が出入りして、関われる仕事をつくったりできたらすごく良いですよね。
おわりに
取材を終えてお店を出ると、車と工事の音が飛び交う世界が広がっていました。
「若い頃はね、田舎でカフェをしたいと思ってたんですよ。それこそ白川町みたいな場所で、農業をやってる人や地元の人にとって憩いの場をつくって、交流の場になったら楽しいんじゃないかって」
今を積み重ねた先に都心でできた「憩いの場」
白川町と大阪を繋ぐ中学生の行動は、たくさんの芽を生むきっかけになっているような気がしました。