今回は白川町でパンショップイマイを営み、『白川町のみんなのお母さん』と言ってもいい程のキャラクターで親しまれる今井富子さんにお話しを聞いてきました。
パンショップイマイといえば、元白川高校の坂下にある、白川町の元祖コンビニ。学校帰りや町民会館の行事の後に立ち寄っていた人も多いのではないでしょうか?
45年続けられているのはお客さんのおかげ。みんなが助けてくれる
——パンショップイマイさんといえば、白川町のみんなの思い出の場所だと思いますが、今年で何年目ですか?
45年よ~!
——ほぼ半世紀!すごい…
でも当時はここら辺には何にもなかったから、“お店を出したい“ってヤマザキパンの人に相談した時に「ここでやっても内職にもなりませんよ」って言われたわ!(笑)でもそれから高校ができて、町民会館ができて…少しずつ人通りができてきたんです。
——そんなことを言われたなんて・・・!それでもお店を始めたのはすごい。
「お店をやりたい!」って最初に言ったんはお姑さんやったんやけどね。私が白川町の百姓の家から嫁いできて、自分の子どもがまだ3歳やったときにお姑さんが始めたいって言ったんよ。そうゆう何も知らないところから始めました。
——お子さんが小さい時に手探りで始めたのは大変だったと思いますが、最初はどんなお店だったんですか?
ヤマザキのボールドーナツの販売から始めました。それから、ヤマザキのパンとシュークリーム、ギフトを始めましたね。ここら辺では珍しかったから、人が来てくれるようになりました。
——すでにギフトも始められていたんですね!今でこそ他のお店もありますが、地域にとっても貴重なお店だったと想像できます。
ただ、注文に対応するために『在庫をある程度抱えておく』っていうのがわからなかったから、ギフトの注文が沢山入って慌てたこともあったね~。
——本当に、試行錯誤しながらお店の経営を学ばれたんですね!
そやね~。それから、白川高校ができて、売りにいくようにもなりました。雪の日はチェーンを巻いて、おぞい(足元が悪い)砂利道をあがって、大変な日もありました。
——近くにあった白高(白川高校)の人達とか、今井さんにお世話になっていた人もたくさんいるはず。まるで、白川町の歴史を辿るようです…。
そうよ~、今は高校もなくなって、マツオカみたいなスーパーもコンビニもできて、ヤマザキの商品はどこでも買えるようになったけど…こうして店が続けられているのはお客さんのおかげ。みんなが助けてくれるんです。
——そんな富子さんだからこそ、みんなに親しまれているように思います!あと、今ではヤマザキ以外のオリジナルの商品、お弁当などもありますよね!
「ちょっとうちでやってみない?」イキイキする場所をつくる
お弁当は、去年から仕出し弁当屋で働いていた人が来てくれて、やってるんです。みんな主婦やから、私が何も言わなくても料理もよくできるし、弁当の並べ方のアイディアも、効率の良いやり方を工夫して教えながらやってくれてます。
——みなさんの得意なこと、やりたいことをダイレクトにお店に活かされているとは…。
そうね~。今日も「お雛さんで赤飯をやりたい」って話があったよ。活躍する場所があるとみんなイキイキするわ!
——パンショップイマイさんで働いているお母さんたちはみんな明るくて元気ですよね。自分が得意なことを仕事にしてるからでしょうか。あ、さっき手作り餃子の新メニューが増えてるのを見ました!
餃子は中国人の子が皮から作ってくれてるんです。この近くに住んでいる子がいて、「ちょっとうちでやってみない?」って声をかけて、来てくれることになりました。
——本格的!そんな風にボールドーナツから始まって、お弁当や餃子まで、地域にいる人と一緒にお店を作ってこられたんですね。
そうそう、だからドーナツだけじゃなく、サンドイッチを習いに行ったり、“今の時代は焼き立てパンだなー“って始めたり。
焼き立てパンについては、設備投資がかかるから悩んだけど、主人が”良い“って背中を押してくれました。それから364日、元日以外休まず営業しています。
——えぇぇぇ!!?元日以外休まず営業ですか?!
そうよ~!お店は朝の6時~21時まで。今は7時~19時半になったけど。朝は4時起きで、サンドイッチとパンを作って、お弁当をつくってます。
——すごい…
もう体が慣れちゃって、早朝でも「早く起きてサンドイッチを作って出荷しなきゃ」ってなってるわ(笑)
「初めての給与をもらったで、これお孫さんにやって」
——いつお店に来ても温かさを感じられるのは、今井さんの雰囲気がお店に沁み着いているからのような気がします。そんな45年の中で、今井さんが印象に残ってるお客さんやエピソードってありますか?
いっぱいあるよ〜!上麻生から来てた子が「初めての給与をもらったで、これお孫さんにやって」っておもちゃとお菓子を持ってきてくれた時は、涙がこぼれるくらい嬉しかったわ。(その時、主人の病気の介護の関係で娘と孫が家にいたので)
——初任給で!もうそれ家族にすることじゃないですか…
他にも、男の子が「初めての給与をもらったから今日はみんなにケーキ買って帰る」って寄ってくれたり。
——また初任給…!なんだか、聞いているだけで泣けてきそうです・・・(涙)
白高に通ってた子が赤ちゃんを抱いて「おばちゃん、子どもができたよ~」って来てくれることもあるよ。
——本当に今井さんがみんなのお母さんのような存在だ。
そうなんかねぇ。でも、子どもは宝だから可愛いよねぇ。最近も移住者の方が近所にいて、親のように感じてくれたら嬉しいなとは思うねぇ。
——『パンショップイマイ』さんの懐の広さを感じます。そんな今井さんの元気の秘訣は何ですか?
私が元気を受け取ってるんです
私の元気の秘訣?なんやろねぇ…。まぁお店でお客さんとかいろんな人に会うことかねぇ~。みんな人がええから、私が元気を受け取ってるんです。マメ(元気)が一番。
——私たちは逆に今井さんに元気をもらってます!ちなみに、今井さんがこれからやってみたいことって、ありますか?
あるよ~!昔テレビで見たんやけど、おばあちゃんがお惣菜を大きい器にのせて、バイキングみたいに好きな量を買うことができるお店。
そういうのをやってみたいね!
——楽しそう!
始めからパックに入ってるんじゃなくて好きなだけ、家族の量に合わせて選べるのが面白い。ハイカラなお店はどこにでもあるから、逆にここにしかないものを活かして、手作りで豆なんかを使った料理を出したいわ。
——パンショップイマイさんのお母さんたちが作ったお惣菜。きっと白川町の野菜や昔ながらの味が詰まっている町の新しいスポットになりそうですね。ぜひ、お店が実現するのを楽しみにしています。
本日はありがとうございました!