縦向きにしてください

「ぼちぼちまめにやろまいか」

山の中のカフェは、”好き”が詰め込まれた『みんなの親戚の家』

2023年8月に佐見地区でオープンしたカフェ『山ト風ト』

店主の長谷川めぐみさんは佐見出身。現在は春日井市で暮らしながら、週末には姉である真奈巳(まなみ)さんと地元で『山ト風ト』を営んでいます。

郷土料理のランチやデザート、珈琲などのメニューがあり、町内外からたくさんの人が来店する人気店。

 

「佐見がすごい好き。このお店には”好き”が詰め込まれてる」

 

と語るめぐみさん。

オープンのきっかけや、お店と佐見への想いをお聞きしてきました。

 

失敗しても、やりたいことをやる

——めぐみさんは、ご自身の地元である佐見に『山ト風ト』をオープンされたんですよね。

5、6年前に「いつかこんな暮らしがしたい」ってこの絵を描いたの。

実際にめぐみさんが描いた絵

実際にめぐみさんが描いた絵。その多くが『山ト風ト』で実現されています

 

——すごいですね…!既に実現されているものがたくさんあります。

そうなの!もちろんこれは地元の佐見をイメージして描いた。鮎とか鮭が川に戻って来るみたいにさ、私もいつか佐見に帰って来たかったの。

だから商売なのか趣味なのかはどっちでもよくて、ただ「山の中でやりたいことすべてやりたい!」っていう気持ちだった(笑)

—–そこから具体的に進んだのは、何かきっかけがあったんですか?

商売にしなくてもいいと思ってたから、ゆっくり物件を探してたの。そしたら、実家のすぐ裏にあった今の物件と出会って、やりたいことを説明したら持ち主の方が「めぐみちゃんが本当にやりたいならいいよ」って言ってくれた。

「こんなに良い場所を譲ってもらえるなら、もうやるか!」って(笑)

『山ト風ト』のテラス席から見える風景

テラス席からは、棚田や里山の風景、そしてめぐみさんのご実家もあります

 

——理想の物件が見つかることで、物事が一気に進んでいったんですね。

そう、急だよね(笑)

だから「なんでカフェを始めたの?」って聞かれても、はっきりした理由はあんまりないの。佐見に帰って来たい、母親のことも心配、好きな場所をつくりたい、そういういろんな要素があって決断したんだと思う。

——理想の絵を描いた時から、いろいろな想いが積み重なっていたというか…

きっとそうだね。それに、何をやるにしても結果がどうなるかなんて分からないから。主人も「やってみたら?」って背中を押してくれたし、失敗してもやりたいことをやろうと思った。

もし失敗しても、まあどうにかなるかなって(笑)

 

『山ト風ト』はみんなのもの

——そうやってチャレンジすることに、躊躇などはなかったですか?

全然ない(笑)昔から、常にやりたいことはやってきたの。

ずっと自然の中が好きだったから、学生の頃はずっとダイビングで海に潜って、結婚してからは春日井に住んでるけど、子どもが小学5年生ぐらいになったらいっしょに登山をするようになった。そこから10年ぐらいはもう登山にどっぷり!海から陸に上がった感じだね(笑)

それで、山に行けばキャンプもするでしょ?火をおこすことも大好きだし、山にある山ブドウの蔓を編んで籠をつくったりも好き。ぜんぶに興味があった。

お店の外観

山に囲まれたお店には、めぐみさんの”好き”が詰まっています

 

——ずっと好きで続けていたものが、一つずつ繋がって『山ト風ト』になっていくんですね。

私が24歳の時に父が亡くなってるんだけど、父は遊びも仕事もあらゆることをやってきた人だった。山登りとか、仕事もパン屋をやったりケーキ屋をやったりお茶屋をやったり、佐見の人に私は「父にそっくり」って言われるから、その血を引いてるんだろうね(笑)

——すごい行動力です…(笑)似ているというめぐみさんが佐見でお店をやってくれるのは、地域の人にとっても嬉しいですよね。

当初は、お客さんとして町外の人は来ても、佐見に住んでる人は来ないかなって思ったの。提供できる料理も家庭料理が多いし、わざわざ食べに来ないかなって。でもみんな一丸になってサポートしてくれて、改めて佐見の繋がりの濃さを感じた。

「これいるか?」「これやったろうか?」って野菜とかいろんなものを持ってきてくれたりする。

接客するめぐみさん

町内外から来たお客さんと、時間をかけてコミュニケーションを取っている姿が印象的です

 

——人も場所も、佐見を感じられる場所になっているんですね。

生前、父が「佐見の人が町外へ行っても懐しく思ってくれる様な物を創りたい」って語っていたことがあって。

父とはやり方が違うけど、佐見を思い出した時にふらっと気軽に立ち寄ってもらえる場所をつくりたいなぁっていう気持ちもあった。

——まさに、町内外の人にとってそういった場所になっていますよね。

「今日はどんな人に会えるかなぁ」って、今はお店を開けるのが楽しみで仕方ない!

物件もそうだし、すべてのことが順調に進んで来た。もう怖くなるぐらい(笑)

たまたまあるカフェに行ったら、そこに「自分のお店に置くならこういう看板!」って思っていた看板が置いてあったの。店主の人に相談したら、その人が看板をつくってくれることになって!

暖炉も、家具も、ストーブも、みんなのお陰でいろんなものがここに集まってきた。

入口の前にある看板を背に歩く、めぐみさんさんと、姉の真奈巳さん

入口の前にある看板。「ぜったいに錆びた鉄で、月日とともに変化していくものがよかった」

 

——めぐみさんの理想が明確だからこそかもしれませんね。

「こういうのが欲しい!」って言ってるからだろうね(笑)

だからこのお店は自分たちでやってるけど、そうやって協力してくれた人や関わってくれる人みんなのもののような気がしてる。

”パズルのピースが埋まるように”って言葉があるけど、ほんとにそんな感じだった。

 

「ぼちぼちまめにやろまいか」

——「みんなのもの」というのが実際に場所にも表れているというか、ここに来るとすごく落ち着いて、ぼーっとできます。

大人になって、みんな対人関係とかいろんなものに悩んでるでしょ?ここに来た人が、ちょっとでも心が軽くなってくれたら良いなっていうのはすごく思う。

だから来たお客さんが、芋のつまみ食いできたり、薪割りしたり、たき火したり、そういうのを通して人と人のコミュニケーションが生まれて、繋がっていく場になれば良いなって思う。

「自由につまみ食いしてOK」というお芋

この日は「自由につまみ食いしてOK」というお芋が置かれていました

 

——たしかに「つまみ食い」にはビックリしました(笑)お店っぽくない雰囲気というか。

佐見の人はお店に来たら知り合いに会える。その人たちが話して起こる笑い声を、都市部から来たお客さんが聞くとホッとしたりするかもしれない。

もしかしたら実家がない人もいるかもしれないし、このお店が『親戚の家』になれれば嬉しいね。

店内に置かれている、お客さんが自由に書けるノート

店内には、お客さんが自由に書けるノートが。あらゆるものから「繋がり」が感じられる場所になっています

 

——なるほど…『親戚の家』!その雰囲気から安心感が生まれて、人の繋がりを感じられる場になっているんですね。めぐみさんが今やりたいことってありますか?

うーん…ない。やれてるもん(笑)

もちろん今後やってみたいことはあるんだけど、今はこれ以上やると頑張り過ぎになっちゃう。

「ぼちぼちまめにやろまいか」っていうスタンスが良いね。

——「ぼちぼちまめにやろまいか」、ですか?

佐見の人はよく「まめかな?」って言うんだけど、それは「元気かな?」って意味。

適度に、元気にやる。それよりやり過ぎて頑張ると、いつか頑張れない時がきちゃうから。

お気に入りの看板の前で、めぐみさん(写真右)と姉の真奈巳さん(写真左)

お気に入りの看板の前で、めぐみさん(写真右)と姉の真奈巳さん(写真左)

 

「なるようにしかならない」と笑ってお話してくれためぐみさん。

悩んでいたことがとてもちっぽけな気がして、勇気をもらえるような時間でした。

 

『親戚の家』の存在に、落ち着き、安心して、勇気がもらえる。とても心強いです。

 

【長谷川めぐみ さん

屋号   :ますや(『山ト風ト』の場所の屋号は”出口”)

出身   :佐見地区

学校   : 岐阜県立加茂高等学校、東邦学園短期大学

職歴  :自営業

趣味  :登山、クライミング

読んでくれている人に一言  :

ここには何もなく

ただ山があり

風がそよぐ…

ふらりとお越しください。

みなさまにお会い出来る日を楽しみにしております。

 

取材年月:2023年12月 

【山ト風ト】

〒509-1221 

岐阜県加茂郡白川町上佐見4967

 

営業日はInstagramからご確認ください。

Instagram→https://www.instagram.com/yamatokazeto

  • 取材執筆/写真:

    澁谷尚樹

  • 監修:

    白川町役場企画課・Anbai株式会社

つづけて読む

ABOUT

家を『屋号』でよびあう慣習が根づく白川町そんな町の想いを集め人と集落と未来をつなぐ