縦向きにしてください

「やっぱり佐見が好き」

ようやく見つけた2本の軸は『林業と狩猟』

2022年10月に白川町に移住し、林業の分野で地域おこし協力隊として活動する山本圭汰(やまもとけいた)さん。移住後には猟銃免許も取得し、有害鳥獣駆除を行う『白川町猟友会』の一員としても活動しています。

 

「いずれは林業の親方として独立して、この地域でずっと暮らしていきたい」

今後についてそう語る山本さん。地域おこし協力隊になった経緯や、白川町への想いについてお聞きしてきました。

 

白川町との出会いのきっかけは1本の映画

——以前は名古屋で、林業とは別のお仕事をされていたと聞きました。山本さんが白川町で林業に関わるきっかけは何だったんでしょうか?

もともとは岐阜県の各務原市の出身なんです。

たまに名古屋から実家に帰って、田んぼや岐阜の山を見るとすごい落ち着く感じがして。キャンプが好きで山が身近な存在だったこともあって「岐阜という慣れた土地で、いつか田舎暮らししてみたいなぁ」と思っていました。

林業の現場でお話する山本さん

岐阜の山間部に住んでいた友だちの家に遊びに行くこともあり、その度に「やっぱりええなぁ」と思っていたとか

 

——そうだったんですね。まさに白川町はピッタリな土地ですよね!

そういう気持ちがあった当時は仕事がかなり忙しくて、高熱を出しても休めない日もありました。

会社やお客さんのことばっかり優先して、自分のことがすごく疎かになってたというか。ふと「自分をもっと大切にしよう」って思ったんです。

そんな時に映画の『WOOD JOB!(ウッジョブ)*』を観ました(笑)

*都会の高校を卒業した主人公が、あるきっかけで田舎暮らしと林業に出会い成長していく青春エンターテインメント映画

 

—–『WOOD JOB!』僕も観ました!(笑)田舎暮らしへの漠然とした興味が、林業の映画を観て具体的なものになったんですね!

はい、それで調べてるうちに白川町での地域おこし協力隊の募集を見つけました。募集期限の2週間ぐらい前で「え、急がないとヤバい!」と思ってすぐに応募して(笑)

お話する山本さん

「白川町のことは知らなかったし、ほんとに偶然だった」と振り返ります

 

——まさにタイミングが合ったというか。

焦らずゆっくり考えようかとも思ったんですけど、このタイミングを逃したらもうやらないかもしれないなと思ったんです。

今までは周りの人に「こういうの良いんじゃない?」って勧められるとすぐに影響されてきました。それでやってみてうまくいかなかったら「自分がやりたくてやったわけじゃないし…」って人のせいにしたり、後悔したりしてきて。そういうのはもう止めたかったんです。

——そういった今までの経験があったからこそ、思い切った決断ができたんですね。

当時は、たまたま食べたイノシシの肉が美味しかったり、岐阜の山間部に住んでいる友だちが獣害で農作物が食べられたりした話を聞いていたので、狩猟にも興味が出ていました。

『林業』と、山での暮らしに関わる『狩猟』は初めて自分でやりたいと思ったことだったから、その2つを軸に生きていこうと思いましたね。

間伐作業をする山本さん

間伐作業をする山本さん(写真右)。実践を通して技術を身につけます

 

地域の繋がりを通して『やりたいこと』が形に

——いろんなものが具体的に繋がっていったんですね!実際に移住してからはいかがですか?

『WOOD JOB!』みたいに楽しいことばっかりじゃないけど、気持ち良く過ごせてますね(笑)

仕事で入る山の中で、風が吹いて森の「さーっ」って音を聞くと、すごく落ち着きます。疲れて一息ついた時に外で食べるご飯は美味しいし(笑)

体を動かして規則正しい生活をしてると、心の余裕ができて「こういうことやってみたい」って思うことも増えましたね。

——まさに「自分を大切にする」ということが形になっていますね!

そうですね。それに白川町では、やってみたいと思ったことを周りの人に言うと「こういう人おるから紹介するわ!」って繋いでくれて、そこで出会った人がすごく手厚く教えてくれたりするんです。

「狩猟やりたい」って言うと猟友会の人を紹介してもらったり。今住んでいる佐見地区の家も、白川町に移住してから紹介してもらいました。

地域の人にすごく助けられて、やりたいことができてるなぁって思います。

取材時に山本さんと作業していた方々

この日の現場のメンバー。「移住して、対人関係に悩まされることがなくなった」と語ります

 

——人を大事にする白川町だからこそ、という感じがします。山本さんが地域に馴染むのに意識していることはありますか?

なんだろう…地域活動に顔を出す、とかですかね。相手の顔が見えると、みんな安心するし。そうしてると「ちょっと手伝ってくれないか」って声をかけてくれるようにもなりました。

それに地域活動を通して、この地域の環境も守っていきたいです。

——地域の環境、ですか。

この地域の里山の風景は、ノスタルジックな感じがしてすごく好きです。のどかな風景で、家からぼーっと正面の田んぼを見てるだけでも落ち着きます(笑)

でもその風景って勝手にできたわけじゃなくて、ここに住んでる人たちが草刈りとか手入れを頑張ったからあるんですよね。だからこそ、地域活動にもできる範囲で協力しています。

山本さんのご自宅付近から見える稲穂の風景

山本さんのご自宅付近から見える景色(ご本人提供)

 

「佐見が好き」

——『地域での暮らしや人との繋がり』と、山本さんの『やりたいこと』が良い影響を及ぼし合っているという感じがします。

これからもこの場所で、自分で決めた『林業』と『狩猟』という2つの軸を崩さないようにやっていきたいですね。

周りに流されやすい自分の性格を知ってるからこそ、ブレずに自分のやりたいことと向き合っていきたいです。

——その2つの軸において、今後やりたいことはありますか?

白川は高齢化が進んでいるので、将来的には山の面倒を見る人がいなくなるかもしれません。この地域にいる同年代の人たちに手伝ってもらいながら、管理者がいなくなった山を守っていきたいです。

手入れされていない山はすごく痩せてる木ばっかりだから、なんとかしてあげたいなぁって思います。

この日の現場の様子

この日の現場の様子。手入れされている山は、陽が射すようにきちんと間伐されています

 

——山本さんは移住して1年ほどですが、すごく地域愛が強い印象を受けます。

白川町もそうだけど、やっぱり佐見が好きです。

初めて佐見の風景を見た時に「ここ良いところやな」って思って、そこから実際に住んでいろんな人と触れ合うことで、よりその良さを実感できたというか。

 

ずっとこの地域で暮らしていきたいですね。

作業中の山本さん

 

「車買ったらナンバー33(さみ)にしようかな(笑)」

そう笑顔で語った山本さん。

地域が好きで、地域に溶け込み、その繋がりを通してやりたいことがどんどん形になっていく。ブレない軸は、これからもっと強く太くなっていくんだと思います。

 

【山本圭汰(やまもとけいた) さん

出身   :各務原市

学校  :岐阜県立各務原高等学校

趣味  :キャンプ、サウナ

読んでくれている人に一言  :佐見最高!

取材年月:2023年10月 

  • 取材執筆/写真:

    澁谷尚樹

  • 監修:

    白川町役場企画課・Anbai株式会社

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